序章 罪の始まり

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──午後十一時三十八分、 少年が一人歩いていた。 大きなリュックを背負いながら・・・・・・ ボクの町には御神木がある。 樹齢五百年以上あると云われる桜の木。 恋愛成就の神がいるという伝説があり、実際に思いを告げると叶うと言われていた。 だからボクもそこで自分の思いを伝えようと思う。 中学の頃から好きだった一人の女の子。 進学先も同じという、まるで運命のような繋がりがあった。 明日、ボクと彼女は高校一年生を迎える。 きっとその三年間はとても充実し、ボクの一生の宝物になるに違いない。 卒業の同窓会で、ボクは彼女を呼び出した。 「伝えたいことがあるんだ。あの桜の木の下で」 彼女は頬を赤らめて、それでも笑顔で頷いた。 ボクはその笑顔が答えだと思った。 でもボクが一歩を踏み出さなきゃいけない。 たとえ答えがわかっていても、自分の思いを教えなくては不公平だと考えたからだ。 夕日に照らされ、燃えるような葉を宿した桜の下で彼女は待っていてくれた。 期待に、未来に胸を躍らせたボクは、何度も練習した言葉を頭の中で繰り返す。 一年の頃から好きでした! ボクと付き合ってください!
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