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よし言える。
あとは彼女の前でそれを伝えるだけだ。
勇気はある。
伝説の桜も見守ってくれている。
あとは・・・・・・
彼女がボクに気づいた。
手を振って自分がここにいると知らせてくれる。
良かった。約束を覚えてくれているんだ。
もし忘れられていたらという不安は消え、ボクの心に余裕ができていた。
──午後十一時五十七分、少年が桜の木の下で立っていた。
リュックの中身が月明かりによって鈍く光っていた。
「もう遅いわよ。てっきり忘れてるんじゃないかと思ったじゃないの」
「ご、ごめんなさい!」
「いいよ。許してあげる」
「あ、ありがとう!」
くすっと笑う彼女の笑みに救われた気分になった。
ボクは彼女の前に立って深呼吸した。
胸の鼓動が早くなっているのがわかる。
「それで、今日はどうしたの?」
彼女がとりあえず訊いてきた。用件はわかっているはずだ。
この伝説を教えてくれたのは彼女自身だからだ。
「その、ぼ、ボクは・・・」
「うん」
──午後十一時五十九分
少年は稼動したそれを月に掲げていた。
その顔を読み取ることは出来なかった。
「一年の頃から君のことが好きでした! ボクと付き合ってください!」
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