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「あ、この写真に写ってるのは、水野君ではないかな?」
「ぬ、ホントだ。市大会の時か・・・?
いつの間に撮られたんだ。
ちょっと間抜け面だし」
「そうかな?私には結構凛々しく見えるんだがね」
「(まずい!!目茶苦茶嬉しい!!!)」
「水野君!鼻血が!!!」
トーヤが外に出かけて早40分。
待ちくたびれた啓太と桐夏は二人して一つのアルバムを覗き込んでいた。
謀らずも、さっきの啓太が熱望していたシチュエーションだ。
「すみません先輩・・・もう止まりました」
「はは・・・いや、気にしなくていいよ。あ、これは茶道部だね。私が写っているよ」
「そ、そうですね・・・」
・・・啓太としては、桐夏の隣で微笑んでいる雪音にトラウマを感じずにはいられないわけだが。
その様子に気づいたのか、少し沈黙した後桐夏は口を開いた。
「・・・水野君は何か勘違いしているみたいだが・・・
雪音は君のことを嫌っているわけではなかったみたいだよ。
まあ、別に好いている人がいるらしいがね」
「へ?
な、何言って・・・え?」
1.日暮雪音は水野啓太を嫌っているわけではない。
2.日暮雪音には別に思い人がいる。
新事実2連発。
啓太の脳はそれを処理しきれなかった。
バカだもん。
さらに・・・。
「しかし、流石に『愛してる』は嫌で、脊髄反射的に罵倒してしまったらしい」
桐夏がそれに止めを刺した。
「ソウデスネー ダヨネー アハ、アババババ」
「!?
頼む!壊れないでくれ!あ、ちょっと!?」
壊れると同時にビダァァンという派手な音を立てて啓太は仰向けに倒れた。
一瞬止まっていた鼻血もその衝撃で噴出した。
「あわわわわ・・・ま、まずは鼻血を止めないと・・・!」
冷静な判断を下したつもりの桐夏だったが、その実かなり酷いパニックに陥っているみたいだ。
何をとち狂ったか、啓太に馬乗りになり、覆いかぶさるような格好で啓太の鼻を抑えたのである。
しかも顔が無駄に近い。
啓太の体の左に出来上がった血だまりに気付かなければ、どう考えても勘違いされるシーンである。
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