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これは恋だ。
少年少女はそうやって簡単に思い込んでしまう。ホンモノにする前に。
2-Cの水野啓太もその手合いだった。
一目惚れする人は発情しているとよく言うが、そうであるならば啓太は絶賛発情期真っ盛りといえるだろう。
なんせ三階の教室からグラウンドの女子生徒を見て惚れたのである。
惚れた云々よりも視力のよさに感服しなければならないのかもしれない。
だが啓太はそこで行き詰まってしまった。どのクラスの誰だかわからないのである。体操服に入っているラインの色で、三年なのが辛うじてわかる程度。ここで啓太の一目惚れは終止符をうってしまうのだろうか。
だが当の啓太の足取りに迷いはない。学校はすでに部活の時間帯も終わり、校舎を陣取る吹奏楽部なども解散している頃合い。
五階建て校舎の最上階。
二つある音楽室を過ぎ、もっとも奥にある教室。
『アルバム室』
そこのドアを、啓太は押し開けた。
「よう!トーヤ!」
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