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啓太の大きな声がアルバム室に響き渡った。余談だが、彼はサッカー部のキャプテンである。人一倍大きな声をだして全体をリードする役割ゆえに、自然声量も大きくなる。
「と、理屈ではわかっていても頭がぐわんぐわんするね」
アルバム室入口前の椅子に痩せ型の少年が座って揺れる頭を抱えていた。
「トーヤ、恋だよ恋!しかも一目惚れだ!」
「僕としてはそれに『で?』としか返せないんだけど」
騒音への腹いせか、トーヤと呼ばれた少年の声は冷たい。
「まあそう言うなよ~」
へらへら笑いながら荷物を放り出し、啓太はトーヤの前にどんとあぐらをかく。
「はあ・・・しかたない人だなあ・・・」
座ったまま、近くの書棚からアルバムを一冊とり、パラパラとめくりながらトーヤは呆れたように呟いた。
「なんで去年までに気づけなかったんだろう!あれはもうばっちりストライク!絶対運命の人だぜ!」
浮かれる啓太。
なんかステップまで踏んでるし、端から見れば相当危ない人だ。
うんざりしたトーヤは啓太に精神的ダメージを与えることにした。
「去年まで日暮さん一筋だった人がなにいってるんだろ」
「ぐっ」
「デートまでこぎつけたのに手酷くフラれてたよね」
「うわぁぁその話はやめてくれぇぇぇ」
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