初めての死

5/6
前へ
/68ページ
次へ
『うっ…』 あまりの凄惨さに声を失う。 しかし介護助手さんはテキパキと仕事をこなしていた。 『どうもないんですか?』 思わず聞いてしまった。 『慣れればどうってことないよ。早く体キレイにしてやらないと体が固まっちゃうよ?最後は家族にキレイな姿を見せてやりたいでしょ?』 そうだった、家族が待ってるんだ。 もう何も考えないようにして全身を拭く。そして鼻・耳に綿を入れ、口と肛門に胃や腸の内容物が出てこないように特殊な粉の入った棒を挿入する。後は着替えさせて、化粧は助手さんがしてくれた。 終わって見るとあの凄惨な姿からは全く想像もつかないくらい綺麗な肌に穏やかな鈴木さんの顔があった。 家族を迎えると、家族は涙を流しながら声をかけられる。 『苦しかったよね?よく頑張った…もう大丈夫だから…』 家族達は顔合わせがすんだ後こちらを向き深々と頭を下げてきた 『本当にお世話になりました…それにこんなに綺麗にしてもらって…まるでまだ生きてるみたいで…ありがとうございました…。』 俺はその言葉を聞いて思わず涙が出てしまった。
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

71人が本棚に入れています
本棚に追加