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『邪念が籠もった刀…なんでそんな物を持ってるの?』
『単なる練習用だ、忌まわしい力が宿ってるけど、それも使い道があるから持ってる』
霧島さんは嫌そうな表情をしているが、彼女の「浸透」魔術を試すのに適当な品だ。
『ともあれ、この布に浸透を施して』
棚に丸めてある小さい布切れを霧島さんに渡す。
『うん、やってみるね』
霧島さんはボトルのキャップを開けて呼吸法をする。
人差し指と中指を立てた剣印で、指先に聖水を付けてから布にペンタクルを描き、その中央には十字架を描いて祈りを唱える。
『主よ、不浄なる悪霊より我を守りたまえ、我が祈りを聞き届けたまえ、アーメン』
そうして聖水により聖性を現す印を記した布を、邪念が籠もった刀へと被せる。
『…これで…何か分かるの?』
『まあ、しばし待ってみよう』
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『あっ…』
それから数十分後、霧島さんが刀に被せた布を見て声をあげた。
『成功したみたいだね…一応は、だけど』
邪念が籠もった刀に被せた布の、聖水で描かれたペンタクルと十字架の部分が薄黒く濁っていた。
『ちゃんと反応したんだ…やったー!』
霧島さんはパチパチ手を叩いて喜んでいる。
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