闇競市

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薄暗がりの中、マウスの操作音だけが聞こえている… …カーソルがサブウインドウに表示された    “OK”   に移動する。 ダブルクリック… その瞬間、静止画が拡大画面に切り替わりモニターに4つのマルチ画面が表示される。 各画面には移動する少女の姿が様々なアングルから映し出されている。少女の顔には顔認識のフレームが赤で表示され、他の通行人達の緑色のフレームとは差別化されている…一目で彼女がターゲットであることが判る。 …しかし映像はすべて俯瞰の固定カメラで撮影されているようだが…被写体が移動してしまったらどうするのだろう? すると、少女が一つの画面からフレームアウトした瞬間、自動的に別のアングルの映像に切り替わる… こうして複数のカメラで常に少女を追尾し続ける仕組みらしい。 それにしてもいったい幾つのカメラが用意されているというのか? …いや、これはどこか建物の中の監視カメラ映像らしい… とすればカメラの台数が多いのにも納得がいく。 …どこかの監視カメラのデータをハッキングしてリアルタイムでアップしているということか? …いや、普通の監視カメラが一人の少女をずっとフレームの真ん中で追尾し続けるなんてことはちょっと考え難い。 とすると、これはもっとずっと大掛かりな…たとえばビルの防犯システムのコントロールを丸ごと乗っ取ってしまった誰かが非合法にアップロードしているとか…そうした映像なのかも知れない… カーソルが画面右端のスライドバーをタップする… するとまた新たなサブウインドウが開く。 『注意⚠ここからは自動課金になります!***へのチャージがお済みでない方は……』 有名なインターネットマネーのロゴマークが表示されたサブウインドウの下、チャージ済みのボタンを迷わずクリックするとカーソルは自動的にスライドバーにジャンプする… 『指紋認証が必要です』 キーボードの指紋リーダーが点滅する… すかさず指がかざされる。 チャイムが鳴る… 『認証されました』 再びスライドバーをタップ… 背景が黒からオレンジ色に変わりマルチ画面の中心がワイプ… 画面中央に五枚目の画像が現れる… 暗転した画面…少しずつ明るくなり… やがて現れたのはスマホで自撮りしているような少女の顔のアップだった。 …ただ一つ、普通の自撮り動画と明らかに違うのは、少女が今にも泣き出しそうな怯えた表情をしている事だった。
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