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見上げれば、押し迫るねずみ色の雲に乗った誰かがゴミ屑をばら撒いているようだ。
唇にそれが触れると瞬時に雫に変わる。
東京の空を落ちてきたスモッグまみれの雪は汚い。
俺はフッと吹き払い親指で唇を拭った。
店の入口の前に積もりかけたぐしゅぐしゅした雪を、毛先が丸まった小さなほうきで掃っていくと、あぶくをたてて消えていく。
はあ……と、わざとらしいため息が聴こえた。
「こんな天気じゃ仕事にならないわね」
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