出会い

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  振り向くと、眼鏡をかけた貴婦人がしかめ面で重たげな空を見上げていた。 最初は憂鬱な貴婦人の独り言かと思ったが、近くには俺しかいなかった。お客さんなので無視することができなかった。 「なんか会社でも経営されてるんですか?」 貴婦人はしかめ面をさらにしかめて、手を横に振った。 「会社なんて、そんな大それたもんじゃないわよ」 その言いまわしは貴婦人というより、おばちゃんと呼んだほうが適当か……。 「それじゃあね、また来るから」 「あ、はい、お待ちしてまーす」 初めて見るお客さんだな。 その時はそれくらいにしか思っていなっかった。  
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