39/51
前へ
/415ページ
次へ
祐子が目を開けると、ばばがマッチを勢いよく擦ったところだった。 ジュッと嫌な音を立てた後、小さな炎が棒の先端で揺れている。 その火をろうそくに移すのを眺めながら、祐子は上半身だけ引いた。 祐子は、火が怖いのだ。 学校で理科実験が出来るようになった頃は、今と違って争うようにしてマッチに火を付けては消していた。 家でタバコを吸う人間もいなかったので、ライターもなかったし、料理のガスコンロはあまりいじらせてもらえなかった。 火、というものが新鮮だったのだ。
/415ページ

最初のコメントを投稿しよう!

457人が本棚に入れています
本棚に追加