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しかし、ある日のことだった。 奪い合うようにして、マッチ箱を獲得した女の子は、勝ち誇った顔でそれに火を付けた。 普段よりも乾燥していたのか、その火は大きくなった。 実験に利用していた器具のところまで間に合わず、その火は彼女の指に燃え移ったのだ。 たった、それだけだ。 火事になったわけでも、彼女が火傷したわけでもない。 一瞬、指が燃えるように見え、彼女が驚いてマッチ棒をテーブルに放ったに過ぎない。 それでも、それ以来祐子がマッチをすることはなかった。
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