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洗うこともせずに、それを勢いよく歯を立てる。
想像通りの熟れた匂いが、鼻をくすぐる。
それを逃がす物かとばかりに、口の中をいっぱいにした上で深呼吸した。
桃の中に住んでいるような気分になれるほど、それは体中を優しく包み込んだ。
『あはは。あんた、変わらないねぇ。いつもそうやって果物食べてた。』
夏美は、笑いながら近づいてくると、同じように桃を手に取り頬張った。
人の家の者であろうと、最低限を守れば気にしない。
持ちつ持たれつの世界がここは、生きている。
祐子は、普段からばばを気にしてくれているようだし、尚更だ。
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