春雨と始まり

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…うまいわぁ。 私はその歌声の虜になった。 女の声ながら力強い。だけど上品な声だった。 女は私の存在に気づかず歌い続けている。 美人やし、何より歌うまいわ。 このコ、使える。 思考回路は瞬く間に答えを出した。 【あのコ、スカウトしよう。】 🎵~…………。 女は歌い終わるとまたうつむいてしまった。 泣いているのだろうか。 口が歪んでいる。 雛は、 そんな切ない空気を破るように女の元へ歩んだ。 女の上に藤色の傘をさす。 女は見上げた。 怯えた女の綺麗に潤んだ目。 気にせず、ニッコリしてこう言った。 「あなた、うちの店で歌いません?」 、
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