ある雨の日のバス停で

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 気は強そうだけれど、顔は整っていて、可愛らしい女の子に見えた。  セミロングの肩口まで流した髪が雨で濡れて、つうー、と雫が一粒垂れる度に光って綺麗に輝いている。  ファーの付いたジャケットは濡れていた為脱いだらしく、空いたベンチの背もたれに掛けられ黄昏ている。  そのせいで彼女の程良く育ったボディが、濡れた制服とブラウスが肌にひた、と張り付いていて……僕は思わず彼女の背中に浮き上がった、薄い灰色とも白色とも似付かない線から目をそらし、赤くなって目を背ける。全く、周りの視線も考えて欲しいもんだよ。  ふと突然、沈黙に耐えられなくなったのか、彼女がこんな事を言い出した。 「ねーねー、この後どーしよっか?」 「どーするの?」  年頃の男の子なら持っていそうな、変な女性意識を僕は持っていない。大体、同じ人間なんだから、そんな事を気にする必要は無いのだ。だから僕は素直にそう彼女に聞いてみた。 「そーだねー、んじゃカラオケでも行こうっか?」  と、彼女が提案する。  カラオケかー、そういえば最近あまり言ってないなー、前に歌ったのはいつだったっけ? とか思いながら僕は彼女の話に耳を傾ける事にした。それと言うのも。  彼女がこんな事を話し始めたからだ。
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