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「知ってる? ここのバス停ってさ、出るらしいよ?」
そんな事を急にひそひそ声で彼女が耳打ちし出した物だから、怖がりだけど、そう言う事には興味がちょっぴりだけある僕は興味本位で。
「何が?」
と、恐る恐る尋ねて見る。すると彼女声色を変えて、わざとトーンを落として。
「昔ね、このバス停でバスに乗り損ねた高校生が急に飛び出して来た車に跳ねられちゃって……それ以来、出るらしいよ? ここ、その子の幽霊がさ」
元々怖い話が苦手な僕が震えていると、彼女は僕を安心させるかのように豪快に笑い飛ばすのだった。そんな彼女を見て、どきまぎしながら僕は再び笑いを取り戻す。
「な~に固まっちゃってんのよ、アユム。そんなの噂に決まってるでしょ! 出る訳無いって、幽霊なんかさ!」
そんな彼女の笑い声に僕は安心する。そうだよね、幽霊なんかいる訳ないよね。と、さっきまでしきりに降っていた夕立が止み、迎えのバスが路面の泥水を跳ね飛ばしながらやって来た。
「ほら、行こっ? アユム」
手を取合い彼女達がバスに乗り込む。勿論僕も一緒だ。
彼女達はバスに乗るまでずっとわいわい騒いでいた。全く賑やかな子達だったな。
もう、人がいない事を確認すると、クラクションを一、二回鳴らして、バスは去って行く。
バスと女の子達が去った後、乾いた赤い制服を来た僕だけがその場に取り残されていた。
「また、バスが来るのを待たないといけないな……」
壊れかけのベンチに腰掛け、僕はまたバス停に誰かがやって来るのを待つ事にした。
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