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美優は席に着くなり、後ろの女子と話し始めた。
美優はなぜか知らんが、女子の間でも男子の間でも人気がある。
そんな理由もあってか、俺は一部の男子からは圧倒的に嫌われている。
自分たちが美優に近づけないからってさ、俺の靴を便所に隠したり、ノートに落書きするみたいな幼稚な事しなくてもいいじゃん。
あれはあれで落ち込むんだぞ。
そんな事は置いといて、俺の前の席は……鳴海か。
坂井鳴海(サカイナルミ)。鳴海と聞けば、大抵は名字を思い浮かべるだろう。
しかし、こいつの場合は名前。
今では二年から始まっている、連続遅刻記録の保持者だ。
確か今日も遅刻すれば……七十回目だったけな。
あいつは不名誉なタイトルを取るのが趣味なのか?
高一の頃は罰掃除をさせられた数で、神川高校始まってから最高の三十回やってたな。
この神川高校は今年で開校二十周年を迎える古いのか、新しいのか微妙な高校だ。
まあ、どうでもいいのだが。
「おい、新藤。ちょっと便所来いや」
あーあー、うるさい。変なのが来たよ。通称ダメガネ。本当の名前は森 和重(モリカズシゲ)。
こいつは美優のファンみたいなやつで、額縁メガネに、ボサボサな髪、体格もヒョロっとしていてかなり貧弱だ。
でも、こいつの後ろには、どこぞのガキ大将みたいな奴がいる。
まさに、虎の威をかるなんとやらだな。
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