学校に行く時は全力疾走で

31/33

23985人が本棚に入れています
本棚に追加
/402ページ
 保健室は一階にある生徒玄関の近くを通って、その奥にある角を曲がったすぐの所にある。  美優が俺の背中で機嫌良さそうに鼻歌を歌っているからか、それとも純粋に俺に対する嫉妬なのかは知らんが、かなり視線を感じる。  気にしたら負け、と思っていても、やはり気になるものは気になる。  俺はこんな場所から一刻も早く逃げ出したかったので、速度を歩きから走るに切り替えた。 「え? ちょっと宗。速いよ~。あっ……どこ触ってるのかな~」 「えーいうるさい! 変な声出すな。おんぶすると仕方なくそこを触っちまうだろう」 「お尻じゃなくてさ、足を持てばいいんじゃない? でも、僕はこの方がいいんだけどね~」  くそっ、その手があったか。そうだよな、尻じゃなくて足の膝部分を持てばそれで事は解決するわけだ。  いや、でも、もうすぐ保健室だし、ここで持つ場所を変えるのもアレだから……このままでいっか。 「宗のえっち~」 「やかましい!!」  保健室の扉の前に立ち、片手で美優を支えながら扉をノックする。  だが、返事がこない。  念のためにもういちど扉を叩く。  やはり、返事はなし。  仕方ない、誰もいないのだから、勝手に入って道具でも借りようかな。  消毒くらいなら俺にでもできるだろうし。  保健室へと続く扉を開くと、消毒液の匂いが鼻を刺激する。  
/402ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23985人が本棚に入れています
本棚に追加