睡魔が襲ってくる頃に

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 インターフォンとの接続が切れ、静寂が訪れた。  あの声は……家政婦さんの声だな。今日は家政婦さんが来る日だったのか?  美優の家は両親共忙しいため、週に二回家政婦さんを雇っていて、家の事を任せているのだ。 「なあ、美優。今日は家政婦さんが来る日だったのか?」 「え? うん、そうだよ。それがどうかしたの?」 「いや、お前はさ、一人でこの広い家に居るのが嫌で、俺の家に来てるんじゃなかったのかな? と思ってな」 「一人でも僕は平気だもん。ただ、宗と一緒にいたかっただけだもん」 「そうか」  美優との会話も終わり、少し待っていると重たそうな玄関が開いた。  俺達のいる門の扉も開き、庭に入る事ができるようになった。  美優がいるんだから、門の扉は美優に開けてもらえばよかった。 「宗太さん、お久し振りです。私を覚えていますか?」 「当たり前じゃないですか。毛利久美(モウリクミ)さんでしょ?」  今、現れたのが美優の家で雇っている家政婦さんの、久美さん。  メイド服を着用していて、腰まである黒髪のストレート。メガネをかけているが、伊達メガネと本人は言っていた。  姿勢がよく、背筋をいつもピンと伸ばしている。しかし、年は十九歳と俺と一つしか違わない。  なのに、落ち着いた雰囲気が全身からあふれ出ているのが見える。
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