睡魔が襲ってくる頃に

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「ささっ、美優さん。早く家の中に入りますよ?」 「いやだ~。僕は宗と一緒がいいの」 「我ままは駄目ですよ。ご主人様に、甘やかしてはいけないと言われていますので」  久美さんは結構強引に……というかかなり強引に美優を連れて行った。  なんか、手を引っ張ってるとか思ってたら、次の瞬間にはお姫様だっこになってたり、早技すぎて見えなかった。 「美優、また明日な」  俺は抱かれている美優に向かって、大声でそう言う。大声で言わなければ、この広い庭では届かないだろうし。  さーてと、帰りますか。さっさと帰って寝たい。今日はなんか疲れてしまった。  考えてみれば、ダメガネと一戦交えたり、ニートには一方的に殴られたりと今日は散々な目にしか会っていない。  あっ、でも、美優の泣き顔が見れたのは良い事かもしれない。  あいつの泣き顔なんて、ここ数年は見てなかったからな。  最後に見たのは……あれ? いつだっけかな。確か中学の頃で……。  うん、思い出せない。まあ、いいや。  その後、家に着いた俺は風呂に入ってからさっさと布団を敷いて寝る事にした。  今日は家政婦さんがいたから、安眠できるかもしれない。そんな淡い期待を抱きながら。
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