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ニートが前から走って来たので、俺は迷わず一番後ろの個室へと逃走する。
「なっ」
今まで自信満々に自分の事を挑発していた奴が、いきなり逃げ始めたのに驚いたのか、ニートはそんな声をあげた。
そんな事気にせずに、俺はとっとと個室の鍵を閉める。
これであいつらの侵入ルートは、上からに絞られる。
だけど、個室を囲んでいる壁の上部分には、なぜか鞄に入っていたローションをたっぷり塗っている。おそらくこのローション、美優が入れたんだろ。
いつもなら怒鳴る所だが、今回ばかりは良くやったと褒めてあげたいくらいだ。
「くそっ、おい榊原(サカキバラ)。お前、上からあの個室に入れ!」
「御意!」
御意! とか、いつの時代の言葉だよ。つーか、榊原ってさっきのいた二人の内どっちかだよな。
一人は痩せてて、かなり簡単に登れるだろうなー。その先に待っているのは、ヌルヌルした液体だけど。
もう一人は……うん。ただのデブだった。顎が何重にも重なってたね。
扉の向こう側から、軽くジャンプしているかのような音が聞こえてきている。
準備運動だね。だけど、それはなんの意味もなくなるんだよ?
やがて、一際大きくジャンプする音と、壁の上部分を掴むガシッという音がした。
でもその音は数秒もしないうちに、ドシン! という地面になにかが落ちる音にへと切り替わる。
計画通り。
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