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《梵天丸side》
俺には許嫁が居る。
ソイツの名前は愛(めご)。
愛は何でも出来る、所謂要領がいい奴。
何をしても俺は愛に勝てなかった。
あの日だってそうだった。
「オホホ!また私の勝ちですわよ」
「う~!おまえ、ズルしてるだろ!!」
「失礼ですわよ。
梵天丸様が手加減するなと申したのではありませんか!」
あの日は剣術の稽古をしていて俺と愛で勝負したんだ。
いつもと同じ台詞を愛は返してきた。
いつもの俺なら悔しがりながらも流せていた。
“いつもの俺なら”
「何だよ!何でも出来る愛なんか嫌いだッ!」
何故か無性に悔しくて俺は酷い事を言った。
嫌いじゃないのに俺は愛に嫌いだと言ってしまった。
言った直後に気付いて俺は愛の顔を見た。
愛は俯いていて表情は読み取れない。
「………分かりましたわ」
「え?」
「梵天丸様がいいと言うまでこの地には参りません!!
ご安心下さいませ、貴方様の嫌いな愛めは来ませんわ!」
顔を上げた愛は泣いていて傷付いたんだとよく分かった。
あれ以来、俺は愛と会ってない。
二カ月に一回のペースで遊びに来ていた愛は全く来なくなった。
俺が、愛を傷付けてしまったから。
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