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「おーい。タクくーん。行きますよー?」
窓の外に、マリアが立っていた。ここは三階なのだが、そんなことはおかまい無しだ。
「マリアさん!なんでここに?!」
思わず大声を出すと、背後から高浪の怪訝そうな声がした。
「拓?誰と話してんだ?」
(見えてないのか!)
「わりい、高。俺今急患できたわ」
高浪を一人部屋に残し、自分は急いで階段を駆け降りる。
「おい、拓!傷口開くって。あと『急患』じゃなくて『急用』な」
どこか的外れな高浪の突っ込みを無視し、病院の外に出る。
そこにはもう、マリアがスタンバイしていた。
「マリアさん…なんでここに?」
「え。神様土下座させに行くんじゃないのですか」
「………」
「その身体のことなら、詳しくは神様から聞いてください」
あぁやっぱり。
そんなパターンだとは思ったよ。
「さあ、行きましょう!」
うん。
自分で決めちゃった事だしな。
これからの事は、まず神様を殴り付けてから決めよう。
「ああ」
拓人はマリアの手をとった。
そのまま躊躇わずに歩き出す。
そうしてここに、南三原拓人の、主役とは程遠い生活が始まった。
――第1話・END
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