唯一神=オタク

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「すいませんでしたーー!!!」  アリシアは思いっきり土下座した。その程度はもはや、スライディング土下座に近い。 「え。ええ?!」 いきなりの土下座だ。 驚いて当たり前である。 「あれ、タク君。神様に土下座させたいんじゃなかったのですか?」 「いや…そうだけど……」  これはこれでかなり困る。  元々土下座はしてもらうつもりだったが、先手を打たれてしまった気分だ。  アリシアは頭を上げようとしない。 「本当に君には済まないことをした…償いきれるものではない」 そこでアリシアは、土下座の体制を崩さずに、器用に顔だけあげた。 「勉強のほうは…どうだ」 「そりゃ、まあ普通にそこそこ」  本当は全国一位だ。 「女の子たちとは、仲良くしているか?」 「そうですね…そこそこに」  実際、本人が知らないだけで、ファンクラブがある。  アリシアはそんな母親のようなことを訊いたあと、「そうか…そうか」と意味深げに頷いた。 「それはそうだろう。なんせ君は、大物になって貰う予定だったからな」 「大物って…」 「宇宙の真理法則を発見。ビッグバンの謎を解き明かし、ノーベル賞を取る予定だった」 「まじで」 「ちなみに誉れ高い授与式の演壇上で、人類史上初の空中歩行をする予定だった」 「それはいらない」 「そしてその185年後、宇宙人との対話に成功する。」 「人間の寿命って何年だっけ?」 「とにかく、だ。」 アリシアは一つ咳払いをすると、改めて土下座の姿勢を正した。 「本当に済まなかった。全て私のせいなんだ…お詫びに、何でも一つ、願いを言ってくれ。 …ただし「生き返りたい」は無しだ。君には仕事がある。無茶を言って申し訳ない…」 アリシアは深々と頭を下げた。
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