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――三分前。
事は唐突かつ不自然に引き起こされた。
拓人はその時のことを回想する。
(車にひかれそうになってた猫を助けて逆にひかれかける。
辛くもそれを逃れたら背中を押されてコンクリートの壁に頭をぶつける。
でも結局それが死因じゃなくて、いきなり吹いた突風のせいで民家のベランダから降ってきた鉢植えが脳天に直撃。
……なんか意図して俺を殺そうとしてたみてぇ)
そして現在。
拓人は頭から血を流して倒れている自分の身体を見下ろしていた。
「…えーっと、これからどうするんだ?」
古代の思想を信じるなら、ここで天使がお迎えに来るはずだが。
雲とか掻き分けて。
こう、空からパア…っと光が射して。
なげやりな期待を込めて、空を見やる。しかし今日はこれ以上ない位に晴れわたり、雲一つない。軽く期待を裏切られた気分だ。
しかしその時。
一人の少女が、拓人の前に舞い降りた。
フワリとした純白の衣装。
大きく丸い金色の瞳。
緑かかった色素の薄い銀色の髪――。
それらはどことなく宗教画の天使を想わせた。
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