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マリアはいたずらっ子のように目を細めた。
「『神様委員会』に入る、とおっしゃってくだされば、面白いものが見れますよ」
「…面白いものって」
「『神様委員会』に入るということは、神様の下で働くということです。
すると当然、神様に挨拶に行く事になりますよね?
その時に発生する、「私たち」限定のイベントですが……」
「私たち」とは、未完成のままで『らいふわーく』を終わってしまった者たちのことだ。
マリアは可笑しそうに笑う。
「神様の土下座を見られます」
「まじ!?」
「まじです。平謝りの土下座ですよ。見たくないですか?神様の土下座」
「……そりゃ…見たくないって言ったら嘘になるけど」
ただでさえ、理不尽に殺されて腹わたが煮えくりかえっているのだ。土下座くらいは当然だろう。
迷う拓人にマリアは畳み掛ける。
「そうでしょう、そうでしょう。見たいでしょう♪」
マリアはすっと手を差し伸べる。
「さあ、神様に会いに行きましょう」
拓人はその手を取るのを一瞬、躊躇った。
ここでこの手をとったなら、もう普通の生活を送れないのだろう。
マリアは拓人の不安を感じ取ったようだ。
しかしあえて残酷に言い切る。
「タク君。貴方はもう、生きてはいないのです」
拓人は背後を振り返る。
そこには頭から血を流す、自分の身体があった。沢山の人が集まっているが、皆口々に「もう手遅れだ」言っている。
……そうだな。
………手遅れ、なんだよな。
拓人はマリアに向き直る。
「いいぜ。入ってやるよ。その『神様委員会』に。
次期神様の選出が仕事だっけ?
なら早目になんとかしたほうがいい。今の神はどうもいい加減だ」
そう言って、差し出されたマリアの手を強く掴む。
「約束しろよ。絶対神様とやらに会わせろ。意地でも土下座させてやる」
マリアは握られた手を、さらに強く握りかえす。
「うん。わかりました。その約束、楽勝です」
では、と言ってマリアは左の手を高く掲げた。
パチン…
マリアが指を鳴らした瞬間、ぐにゃりと世界が歪んだ。
拓人の意識はそこで途絶えた。
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