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「お前らは黙ってろ。」
どうやら生徒が近くにいるようで、そちら側で何かぼそぼそと話している。
彼らは叔父よりもまともに私の立場を察してくれてるようだった。
「叔父さん?」
「あ‥ああ。」
「私は‥」
「とにかく!」
叔父は私の言葉を遮って言った。
「1回遊びに来ると良い。週末にでも。最後に会ってからもう5~6年になるし、たまには顔見せてくれ。」
いきなり柔らかくなった口調に、昔の記憶が鮮明に甦った。
‥野球好きの叔父と、従兄弟の達也と3人でよく試合を見に行った‥
叔父がまだ若かったころ、幼い私は彼にちょっとした憧れみたいなものも抱いていた。
初恋と呼ぶには幼すぎるが、ただ‥遊びに来てくれると家がぱっと明るくなるような、小さな私の身近なヒーローだった。
人を惹き付けるような、そんな不思議な力が叔父にはあって。
高校生のとき、親が離婚するのを知った私は、友達よりも何よりも叔父に会いたかった。
いつも、どんなときでも、ユニフォーム姿の叔父に元気をもらっていたから。
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