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――時間は遡り、事が起きたのは昨日の晩である。
その日は父の新しい仕事場に母が挨拶でついて行き、珍しく私が家に1人という状況だった。
世でいう栄転というやつらしい。
こんなご時世に、しかもぐうたらな自分の父がそんなことになるなんて思ってもみなかった。
専業主婦の母が居なくなるのはこの15年間ないことだったので、慣れない料理に悪戦苦闘しながらもなんとか晩ご飯を作って。
我ながらなかなかだとか自己満足に思いながら平らげて、食器を片付けようとしたところだった。
せわしなくベルが鳴り響き、危うく食器を落としそうになる。
時計をみると、夜の8時25分。
父も母も今日は帰って来ないと言っていたので、不審に思い帰ってもらうことにした。
…要するに居留守である。ただ、一軒家なので電気がついているのはバレバレなのだが。
昔に慌てて扉を開けたら変質者が乗り込んでこようとしたこともあったので、すこし申し訳ないけど、身を守るためなので仕方がない。
鳴り響くベルを気にせずに食器を洗っていると、途端にベルが止まり、静寂が訪れた。
私はテレビが嫌いな人間なので、家の遠くから聞こえる木が軋む音しか聞こえなくなるのだが、今日はなんだか様子がおかしい。
玄関の方からゴソゴソと数人の気配がするのだ。
嫌な予感しかしない私は、二重で鍵をかけようと玄関に近寄った――――その時
数メートル先の玄関から、がちゃり。
と、鍵が開く音が聞こえた。
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