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――私はどこにでもいるような平凡な人間だ。大手の会社に勤めてはいるが、誰かに見止められるような優点もなく、だからといって周りから見劣りするような欠点がある訳でもない。
ただの、一般人だ。
しかし、そんな凡人にも人生の浮き沈みはある。
つい先日、父が亡くなった。享年六十五。心臓病だった。
父は雨が嫌いで、雨が降った日はよく塞ぎ込んでいた。晴れた日は孫と外で遊ぶ元気な人だった。
私は、父とケンカをしていた。私の結婚に父が反対したのだ。
そんな父が病に倒れ、呆気なくこの世を去った。父は、もう居ない。
しかし、葬式をして父の不器用に笑った遺影を見ても実感は湧かなかった。ただ得体の知れない恐怖と、ぽっかりと穴があいたような喪失感に心を支配されていた。
父がまだ、どこかで生きているような気がしてならなくて、結局、涙は一粒も落ちてこなかった。
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