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父はガハハと笑うと私の目を見据えて言った。
「おう。また会ったな」
私は、父の懐かしい声に思わず涙がこぼれそうになったが、表に出さず冷たく言った。
「死んだんじゃなかったの」
すると父は少し寂しそうに目を伏せた。
「……死んだ。わしはもう、死んだ」
父が鼻をすすり上げる。
「お前も見ただろう。わしの命が消えるのを」
私は無言で頷いた。
「でも不思議なもんだなあ。いつの間にか死んで、訳の分からん内にお前に会いたい、会いたいって願ってたら、会えちまったんだから」
その言葉に、私の頬を一筋の涙が伝った。父に見せまいとあわてて顔を背け、手の甲で拭う。父はそんな私に構わずしわがれた声で続けた。
「お前に謝らんとなあ。父さん、こんな早く死んじまったし。お前の結婚にも最後まで反対しちまって……」
私は堪えても流れてくる涙を隠しながら、首をぶんぶんと横に振った。
そんなこと気にしなくていい、と言いたかったが、上手く言葉にならない。無言の私を前に父は喋り続けた。
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