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私は、父が死んでからの自分を思い出して、恥ずかしくなった。
「生きれるわけ、ないでしょ」
すると父は残念そうに、「そうか……すまんな」とだけ呟いた。
私は父の悲しげな表情に耐えられなくなって言った。
「でも、もう大丈夫。父さんと会ったらなんだかすっきりした」
私は雨と涙を拭った。
父は伏せていた顔を上げて言った。
「頼む。わしが居なくても、振り返らないで生きてくれ。わしの分も、お前が幸せになってくれればそれでいい」
私は父を安心させようと力強く頷いた。父も笑って頷き返した。
「さぁ、いつまでも話している訳にはいかん。そろそろ行かんとな……」
その瞬間、父の目から涙がこぼれ落ちたように見えた。それは雨かもしれなかったが、私は鼻をすする父に勢い良く抱きついた。
父は何も言わず、私の背中に手を回した。
私は泣いた。声をあげて泣いた。ずっとためていたものを全部吐き出した。
この父の温もりも、しわがれた声も、不器用な愛情表現も、全てが愛しく思えた。
私は泣いた。
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