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雨はいつの間にか止んでいて、上方から太陽が二人を照らしていた。
父は私の両肩を掴んで引き離し、「晴れたな」と言って笑った。
そして、寂しそうに呟いた。
「わしはもう、行かにゃならん。これで本当にお別れだ」
私は涙を拭って頷いた。そして、子供の頃からずっと見続けてきた父の厳つい顔に微笑みかけ、背を向けた。
「じゃあ、もう行って。バイバイ」
背後で、父が笑う声がする。
「ほんとにお前は、最後まで冷たいやつだな」
私はきっと笑えない。父を笑って見送ってあげれない。そう思って背を向けたのだ。
父も、最後に娘の泣き顔など見たくはないだろう。
父はもう一度豪快に笑って、「じゃあ、またな」と言った。
私は、目を閉じた。これで父とはお別れだ。ケンカばかりしていたけど大好きだった父。子供の頃、イタズラばかりする私を何度も怒鳴り付けた父。晴れた日に、打ちっぱなし行くぞと、嫌がる私を無理やりゴルフ場に連れていった父。
そんな父とはもう……。
「父さん!」
振り向いた先にはもう誰も居なかった。
私は精一杯の笑顔を浮かべて、呟いた。
「……ありがとう」
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