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剛志の拳が健太朗の顔面を捕らえた。その反動でどすんと健太朗は地面に倒れ込む。
剛志は馬乗りになって健太朗を殴りつけた。
私は剛志の腕を掴もうとした。が、目まぐるしく動くので掴むことができない。
「邪魔すんな雌ブタ!」
私の顎に剛志の肘が直撃する。口の中を切り、私は尻餅をついた。
「だ、誰か健太朗を助けて!剛志を止めてぇえええ!」
助けを求めたが、誰も健太朗を助けようとしない。
自分達が巻き添いを食うのが嫌だったのだろう。ザワザワと騒ぎ立てるばかり。
──薄情者。保身や自分がそんなに大切なの?
剛志は背中に腕を回し、服の中からバタフライナイフを取り出し、健太朗に突き付けた。
「よ~く聞け、俺はこのナイフでさっき女を殺してきたぜ」
健太朗は涙を流した。
「う、嘘だろ、剛志……嘘だと言って…くれよ。本当なら誰を殺したんだよ……」
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