もう一つの過去

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私は怖くなって泣いた。声を上げないようにして泣いた。 ──誰か助けて。見つかれば何されるか……お願いだからどこかに行って。 「やっと見つけた!!」 私は失望感と脱力感に見舞われた。全身の力が抜けていく。 突然、ドスンと人が倒れ込む音が聞こえる。それも2人分の。 私は見つかってない? 通気孔から外を覗いた。床で4本の足が絡み合い、激しく動いている。 暴れ回る足が机に接触して机が横転した。 「邪魔すんな、健太朗!!」 「お前、奈津子を殺すつもりだろ!」 「奈津子には俺の大切なモノになってもらわないといけないんだよ!!」 「好きな人を殺してまで助かりたいのか!!」 「俺の勝手だろ!綺麗事ばっかり言ってんじゃねぇよ!健太朗の考えを俺に押し付け──」
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