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その後、青年は大きな瞬きを数回すると、恐る恐る辺りを見回した。
「問題ない様だな」
ザウバーの安否を確認したベネットは、倒れ込んだままの少年に駆け寄る。彼女は、ダームの横に膝をつくと、冷えきった体を抱えて詠唱を始めた。
呪文の詠唱を終えると、ベネットはその感触を確かめるように、少年の髪を優しく撫でる。程無くして、少年はゆっくりと目を開き、焦点の定まらない瞳でベネットを見つめた。すると、ダームの頬には温かな水滴が零れ落ち、その水滴が乾く前にベネットは彼の体を強く抱き締める。
「まるで、乳呑み児と母親の様だな」
そんな中、聖霊は嘲ける様に言い放つと、青年へ歩み寄った。彼女は、呆けているザウバーの顔を下から覗き込むと、苛立った様子で口を開く。
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