プロローグ

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 透き通る様な青空の下、樫の木から創られた杖を背負った青年は、柔らかな緑の草原を分け入る様に歩いていた。目線を前へ向け、ただひたすらに歩き続けていた青年は、風が冷たく重いものへと変わったことを感じると、静かに立ち止まる。  その直後、一帯には重々しい空気が流れ込み、彼の眼前には乳白色の光が生じる。その光が青年の眼前で広がったかと思うと、みるみるうちに彼の体をを包み込んでいった。 ――その瞬間。  この世のものとは思えぬ爆音と、立っている事は到底出来ないであろう振動が、青年の周囲を支配する。  その衝撃に依って木々は様々な方向へ倒れ、地表は痛々しい程に引き裂かれた。  ところが、その様な状況に在っても、光に包まれたままの青年は、擦り傷さえ作ること無く立ち尽くしている。その状況は、青年にも理解し難かったのであろう、彼は静かに目を瞑ると、気を落ち着けようと大きな深呼吸を繰り返した。 「兄貴……か」  全てが無に還った荒野の中、青年はゆっくり目を開くと、まるで全てを悟ったかの様な表情を浮かべる。 「……最期まで、人の心配ばっかしてんじゃねえよ」  青年は至極悲しそうに呟くと、その場にくずおれ一筋の涙を流した。
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