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静まり返った闇の中
リーンリーンと鈴虫が鳴き始める季節に
男が、ひとり縁側でぼんやり星を眺めていた。
目の前の庭は、手入れがされているのかいないのか、大きな木々と雑草が所々に生えている。
小さいながらも池があるが、魚はいない。
たまに釣ってきた魚を放しているが、数日中には焼き魚に変身してしまう。
それでも男は、この庭を気に入っていた。
手入れの行き届いた庭よりも、見苦しくない程度に自然に任せた庭の方が、趣があると思っているのだ。
ふと、男は手にしていた扇をパチンと閉じて目を細めた。
『ふむ……星が動いたか』
男が暫く眺めていると
『ほう、新たな星が生まれたか』
男は、そのまま腰を上げると静かに自室へと戻って行った。
その後ろ姿は、まるで逢瀬に行くような浮かれ具合だった。
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