出逢い

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「なんでかな、沙代ちゃんの前だと自分を出せそうだったから。俺、あんまり積極的じゃないんだよ」 マサは私から視線を外しながら、たまに私の目をしっかり見、喋っていた。 「俺、沙代ちゃん好きかも…」 「は…」 いきなりの言葉に頭が真っ白になる。 会ってすぐに、好きとかいう気持ちって生まれるものか? 何言ってんの…? ただ疑問が浮かんできた。 「……本気で言ってんの?」 ようやく出した言葉。 立ち止まっている私達に、下校中の生徒の視線がずっと刺さっている。 陽は少しずつ傾き、冷たい風が静かに吹いていた。 もうすぐ冬も終わりなのに寒い。 「ん…まぁ…今日は帰る」 マサはそう言うと、どこか…微妙な顔をして無理に笑顔を作り、「じゃね」と言って歩きだした。 私は返す言葉もなく、ただ見つめているだけだった。
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