出逢い

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出逢ったあの日は鮮明に覚えてる。 親戚連中の冷たい顔、眼差しに黙る事しか出来なかった幼い私。 向けられる言葉は冷たいものにしか感じなかった。 強くなれ、強くなれ、と。 あの日から毎日泣いていた。 誰とも喋らず、学校も行けず。 そして、涙を流しても何も変わらないと気づいてしまった。 我ながら可愛くない。 親戚が囲んでいたテーブルの一番遠い席から声を張り上げた人がいた。 有無を言わせない、凛と響く声だった。 「沙代は自分が面倒みます」 全員の目がそちらに向いた。 唖然としながら。 もちろん私も見た。 何度か顔を見かけた事はあったが、話した事はなかった。 ただ、目が合う度に優しい眼差しを向けられた事はよく覚えていた。
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