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「もういいよ!」
みちるが怒鳴った。
みちるは立ち上がると、恵子に手を差し伸べ、「痛い?ごめんね…」と呟く。
恵子はすんなりその手に掴まると立ち上がった。
まだその目は厳しいものだったが、戸惑いも微かに見える。
「…私は甘いよ、自分でわかってる。けど…大好きなの。それだけなの…」
みちるの真剣な眼差しに押され、言葉が出てこなかった。
今の状況に不似合いなハンバーガーやポテトの匂いが鼻につき、吐きそうになる。
「ごめん…私の分も食べていいから…帰るね。またね」
無理に笑顔を作ったみちるは返事も聞かずに足早に去っていった。
階段を駆け降りる音を聞きながら、私は恵子を見る。
「…食べるか?」
「あぁ…そうしよか」
食欲はまったくなかったが、このまま帰ってしまうのが嫌で、留まった。
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