0号室

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 旅館に到着すると、二階建ての思っていたよりは広い、中々の民宿に案内された。一言で表すなら、田舎の婆ちゃん家。  『M旅館』とは書いてあるが(仮の某所)、まあ民宿だった。荘、の方がしっくり来る感じである。  入り口から声を掛けると、中から若い女の子が笑顔で出迎えてくれた。  此処で高々とテンションが上がる俺。  旅館の中は、客室が四部屋、皆で食事する広間が一つ、従業員住み込み用の部屋が二つで計七つの部屋があると説明され、俺達はそれから広間に通された。  暫く待ち続けていると、若い女の子が麦茶を持って来てくれた。  名前は『美咲ちゃん』と言い、この近くで育った女子らしい。  そして一緒に入ってきたのが、女将の『真樹子さん』。  恰幅が良く、笑い声の大きなすげー良い人。もう少し若かったら俺惚れてた。  後は旦那さんも居て、つまり計六人で、この民宿を切り盛りしていく事になるのだ。  ある程度自己紹介等が済むと、女将さんが言った。 女「客室はそこの右の廊下を突き当たって左右にあるからね。 そんで、あんた達の寝泊りする部屋は、左の廊下の突き当たり。後は荷物置いてから説明するから、一先ずゆっくりしてきな」  ふと友人が疑問に思ったのか、二人、AとBは不思議そうに聞いた。 A「二階じゃないんですか? 客室って」  すると女将さんは、笑顔で答える。 女「違うよ。二階は今使ってないんだよ」  俺達は、今はまだシーズンじゃないからかな?と思い、特に気に留める事なくそれを頭の隅に置いた。  その内開放するんだろう、くらいに思って。  部屋に着き荷物を下ろし、部屋から見える景色を見ていると、本当に気が安らいだ。  これからバイトで大変かもしれないが、こんな良い場所でひと夏過ごせるのならそれくらい全然構わないと思ったのである。  ひと夏のあばんちゅーるも期待してたし。  
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