0号室

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 俺達はその時、残り一ヶ月近くバイト期間があった訳で。三人見て見ぬ振りをするか否かで話し合った。  そんな中でBが、『じゃあ、女将さんの後ろつけりゃ良いじゃん』といった非常に安易な提案を挙げた。 A「つけるって何だよ。この狭い旅館でつけるって、現実的に考えてバレるだろ」 B「まーね」 俺「何で言ったんだよ」 AB俺「…………」  無駄に時間を費やしただけで、結局三人で考えても埒が明かなかった。  来週には残りの二人が此処へ訪ねる事になっている事から、何事もなく過ごせば楽しく過ごせるんじゃないか、そう思った。  だが俺らは男で、三人組みで、ほんの少し冒険心が働いてしまい、『何か不審なものを見たら報告する』と言う事で、その晩は大人しく就寝したのだった。  そうしたら次の日の晩、Bが一つ同じ部屋の中に居る俺等をわざとらしく招集。  『お前が来いや!』と口走りそうになったが此処は抑え、渋々Bの元に集まる。 B「俺さ、女将さんがよく二階に上がるって言ったじゃん? あれ、最後まで見届けたんだよ。いつも女将さんが階段に入って行く所までしか見てなかったんだけど、昨日はその後出て来るまで、待ってたんだ」  そう言うとBは口端を吊り上げ、視線を宙に留めた。 B「そしたらさ、五分くらいで降りてきたんだ」 A「そんで?」 B「女将さんていつも俺らと飯食ってるよな? それなのに、盆に飯乗せて二階に上がるって事は、誰かが上に住んでるってことだろ?」 俺「まあ、そうなるよな…」 B「でも俺らは、そんな人見た事もないし、話すら聞いてない」 A「…確かに怪しいけど、病人かなんかっていう線もあるよな」 B「そそ。俺もそれは思った。でも五分で飯完食するって、結構元気だよな?」 A「そこで決めるのはどうかと思うけどな」 B「でも怪しくないか? お前ら、怪しい事は報告しろって言ったじゃん。だから報告した」  語尾が多少得意げになっていた為、俺とAはかなり苛立ったが、そこは置いておいて、確かに少し不気味だなと頭に浮かんだのは事実だった。  『二階には何があるんだろう?』  三人共、そんな想いでいっぱいだったのである。  
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