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「ふう…」
部屋の一室でバイオリンを奏でていたウインドは、ふと窓の外を見る。
「やっぱり皆知らないのですね。」
今日は特別な日。
一年の内で一番幸せな日。
誕生日。
「一人楽しすぎ…ってこのことですかね。」
今日はなぜか誰ひとりとして部屋に尋ねてこない。
忙しいのだろうか。
ウインドは気を紛らす為か、再びバイオリンを弾き始めた。
そこに、ノック音が聞こえた。
「どうぞ。」
「失礼する。」
入って来たのはレイだった。
いつもと何かが違う。
直感的にウインドは思った。
「何の用ですか?」
「ったく…何だかふてくされてるみたいだよな。」
レイはピアノの椅子に座る。
「ふ…ふてくされてなんかいませんっ!!」
ウインドはそっぽを向いた。
「うーそつけ。闇を操る私にとってはそんな気持ちお見通しだぞ。」
ウインドは耳まで真っ赤にして俯く。
嘘をつくには相手が悪かった。
「ま、心配せんでもいい。何を考えてるかは知らんが、一先ず外で気分転換でもすりゃ落ち着くんじゃないか?」
(本当は気付いてる癖に)
「…意地悪…」
ウインドはバイオリンを片手に外に出て行った。
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