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「な…なっ…」
もう一人の男が口をぱくぱくさせながら小太りの男を見る。
「私に勝とうなんぞ一万年と二千年早い!!わかったなら私にもう一度投げられる前に逃げろ。」
「う、うわあああ!!」
二人の男は直ぐさまのけ反る。
「あの…お客さん、お金は…」
店員が男に言う。
「あ、ああ…これで…」
男達は一万円札を二枚渡した。店員からお釣りを受け取ると、男達は逃げるように居酒屋を出て行った。
「ふう…無駄な体力使いましたね。」
「き、菊…大丈夫か?」
「大丈夫ですよ。このくらい…」
そういった瞬間、菊は倒れ込んだ。咄嗟にアーサーが抱える。
「き、菊っ!?」
「…大丈夫です…。酔いがまわってきただけです…。すぐ…良くなりま…す…」
「お、おい菊?」
アーサーが気がついたときには、菊は既に眠っていた。
「全く…世話の掛かる同盟相手だなぁ…」
アーサーは菊をおんぶしてから財布を取り出し、店員にお金を払って居酒屋を出た。
外で改めて菊をしっかり背負う。
「…年寄りの癖に無理するからだ。菊…。俺があんまり飲んでなかったのが唯一の救いだな。」
アーサーは菊の家に向かって歩きながら呟く。
「ん…ぅ…アーサーさん…」
ふと漏れた菊の声に一瞬アーサーはびくっとする。
プライドが高い菊の事だ。おんぶされていることを知ったら顔を真っ赤にするだろう。
もちろんそんな菊もアーサーとしては見たかったのだが。
しかし、菊は再び寝息をたてはじめる。
「…なんだ、ただの寝言か。」
内心アーサーはほっとする。
伝わってくるほのかな温もりに、アーサーの胸の鼓動が速くなる。
(おっ…俺の為だからな…!!菊の為じゃないんだからな!!落ち着け俺!!)
高鳴る鼓動を聞きながら、アーサーは顔を真っ赤にしながら菊の家まで行ったそうな。
その後、菊の家の明かりが消えなかったというのは、また別の話。
fin.
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