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「い、一緒に昼飯食わねぇか?」
アーサーが菊を昼食に誘ったのは、会議の休憩時間中の事だった。
【伝えて…】
「…」
「…」
(あああ!!なんか喋れよ!!俺!!)
菊と一緒に食事をしているというのに、アーサーは緊張のあまり一言も話せないままでいた。
「あ…あのさ…菊…」
「な、何ですか?」
アーサーが呼び掛けると、菊は顔を上げた。
「菊…は、好きな奴とか、いるのか…?」
「…え…」
これには、菊も驚きの顔を隠せなかった。
「お前…何時も皆に笑いかけてるからさ…ぱっと見解らないけど…べ、別にお前の事が好きだとか、そういう訳じゃなくて…!!」
自分でも、言っていることが支離滅裂なのが分かる。
アーサーは顔を真っ赤にする。
「(可愛いですね…)ふふっ」
「な、何で笑うんだばかぁ!」
菊が小さく笑うと、アーサーはますます顔を赤らめた。
そうこうしているうちに、デザートのソフトクリームが運ばれて来た。
二人はほぼ同時にソフトクリームを頬張る。
「美味しいですね…。」
「あ、ああ…。…ん?」
アーサーはあることに気がつく。
菊の頬に少々ソフトクリームがついていた。
「菊…頬にソフトクリームついてるぞ。」
「あ…すみません。ありがとうございます。」
菊が拭き取ろうとした時…
「止まれ。」
「え…?」
アーサーは素早く菊に近付き、頬についたソフトクリームを舐めた。
「ひゃっ!?なっ…何してるんですかアーサーさん!!」
菊は顔を真っ赤にした。
「俺が、拭いてやったぞ!!か、感謝しろよな!!」
「そんなっ!!拭いて下さるのは有り難いのですが…もう少しやり方なかったんですか!?こ、こんな…公衆の面前で…!!」
「別に良いじゃねぇか。」
「よくありません!!」
「…それにしても…『ひゃっ!!』なんて…かわいい反応するな…。菊。」
「か、からかわないで下さいッ!!」
菊が顔を赤らめ、そっぽを向く。
「やべ…もうすぐ休憩終わるじゃねぇか…。菊、食い終わったなら早く会計済ませて行くぞ!!」
「あ、はい!!」
アーサーと菊は、急いで会計を済ませ、店を出た。
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