お菓子の家

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ピーッピーッピーッ。 さぁ黒頭巾ちゃんのスポンジが完成したようです。 焦げはなく、ふんわりしていて、ダマなんてありません。 あとはさきほど作ったホイップでデコレーションするだけです。 おばさんのスポンジは裏面が見事に焦げています。 でもまだ中は半生です。 竹串を刺してもまだ液体が付着します。 「…愛情でカバーざます」 恋人いない暦33年。 最後の恋であり初恋であるのは13年前の夏。 お菓子の実験体と化された彼氏が愛想を尽かすのには一週間で事足りました。 そのことがおばさんの脳裏を掠め――たかどうかはわかりません。 ともかくスポンジの焦げたケーキだなんて愚の骨頂です。 いくら愛情ぶちまけようが現実的には焦げたケーキのままです。 「あ」 狼がお菓子の家を見つけたようです。
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