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「ケーキをなんとかしてッ…引っ繰り返すざますッ…」
フライ替えしで引っ繰り返そうとおばさんは奮闘中です。
「あぁッ!!どんどん奥に行くざます~~」
焦って身を乗り出します。
(=釜戸の中に身を投じる一歩手前です。)
「あッ!!暗くて足元見えなくて小石に躓いたざます!!」
えらく説明口調なのが一見余裕を感じさせますが、なにはともあれおばさんは釜戸の中に完全に突っ込んでしまいました。
「あ…」
狼が何か言いたげに手をのばします。
その時、気紛れ且つ運命的に一陣の風が辺り一帯を襲いました。
釜戸の扉が音をたてて閉まりました。
ガチャ。
ドンドン。ドンドンドン!!
「・・・」
自分は決して悪くないのに目の前で人が死んでしまった時の心苦しさ。
自分がまさに食べようとした時に手の届かない所へ行ってしまった切なさ。
悲鳴はやがて聞こえなくなり、森は本来の静けさを取り戻します。
言い様のない罪悪感やらなんやらが狼の胸に去来します。
ぐぅ。
追い打ちを掛けるかのように狼のお腹が鳴りました。
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