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物語名まで言うなんてかなり礼儀の良い狼です。
「とりあえず聞くだけ聞くよ」
「あそこに山羊の家があって、親ヤギが留守で子ヤギが七匹いるんだ。だから僕は食べたいんだけど、奴らもなかなか策士、お母さんのフリをするんだけど見破られちゃうんだよね」
なるほど、狼の両手両足が白くなっていて努力の跡が垣間見れます。
「何でバレてるの??」
「それが、お母さんみたいな高い声じゃないから、らしい」
黒頭巾ちゃんは考えます。
彼女は別に動物愛護団体に所属していないですし、弱肉強食に理解を示しているので、反対する気配はありません。
「チョークで声を高く出来るって聞いたことがある気がする…」
真偽のほどはわかりませんが、確かに記憶が蘇ります。
童話『狼と七匹の子ヤギ』の絵本でチョークを食べて…という記述があった気がするのです。
黒頭巾ちゃんはバケットに手を突っ込みます。
「はい、これあげるよ」
取り出したものは、そう、学校からパクってきたチョーク(白)です。
「ありがとう」
狼はとても嬉しそうです。
「(死ぬかもしれないな)」
黒頭巾ちゃんはそう思いましたが口に出すほど間抜けではありませんでした。
別れを告げ、先を急ぎます。
「(薦めるんだったらヘリウムガスとかのほうがよかったかなぁ)」
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