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「邪魔」
低くそう呟いたのは話題の中心である彰だった。
「草野……」
「聞こえなかった? 邪魔だって言ってんの」
いきなりの彰の登場に驚いた修二は彰の名を呟くが、彰は全く反応しない。だけでなく冷たい視線のまま修二たちを見据えるだけだ。
修二は掌を握り締めると、壁側に寄った。場所が開くと、彰はそこを通って行く。やはり、修二のことを見もせずに。ズキズキと胸が痛む。
もうお前に、俺の声は届かないのか?
「ね、ぇ」
クイと袖口を掴まれ、彰は歩みを止めた。振り返るとそこには野ブタがいる。
「修二がかわいそう」
下を向きながらぼそぼそと呟く彼女。
己のようにはなってほしくない。その一心で、ずっと手を差し延べてきた。せめて、上を向いていてほい。
でも、そこは己には明るすぎて。目の前にある幸せより、遠くにある不幸が彰の心を必要以上に掻き立てたのだ。
「修二とは友達でもなんでもない。偶然クラスが一緒になった、赤の他人だよ」
自分自身酷いことを言っている自覚はあった。己が過去に言われて傷ついた言葉を反芻しているのだから。
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