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ビクリと身体を震わせ、彰は修二の手を払い落とした。修二は彰の行動に驚き目を見張っている。
彰も己の行動に同じように驚いており、目をきょどらせた。修二の視線も、この場の空気も、痛い。
「ゴメン……」
いたたまれなさそうに小さく呟くと、彰はそのまま静かに屋上を後にする。修二は彰に拒絶されたショックにより、その場から動けずにいた。
「ちょ、にーちゃん何やってんの!!」
弟の浩二の一言に修二は慌てて手元を見た。そこには無残に切り刻まれた大根たち。今日はおでんの予定だからこれでは使えないだろう。サラダかドレッシングにでも使うしかない。
ふぅと小さく溜息を吐くと大根のみじん切りを皿に入れ、再び大根を切り出した。今度は調度よい大きさになるように、意識を集中させながら。
いつものごとく穴の開いた浩二の服を繕っていた修二の身体が不自然に制止した。持っていたものを床に置くと、赤く血が滲み始めた人差し指をくわえる。
今日の自分はどこかおかしい。いつもならしないような失敗を繰り返す己に、本日何度目になるかわからない溜息を無意識に口から出していた。
「何かあった? 今日変だよ、お兄ちゃん」
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